公務員の定年延長のメリット、デメリット、対策例を解説

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公務員定年延長により2023年(令和5年)から2年毎に1歳引き上げられます。 この制度のメリットデメリットを解説します。メリットは、職員にとって長期的な生活設計ができること、デメリットは、採用の抑制等により職員の年齢構成比がひずみ、職員の負担が増えること、ポストが埋まり、昇進ペースが遅くなることがあります。その対策例と注意点とともに簡単に解説します。

公務員の定年延長のメリット

公務員定年延長のメリットは、高齢期にある職員側の視点では大いにあります。

給与7割でも長期的な生活設計ができる

年金がもらえるまでの間、安定した職を保てます。

給与が7割になるとはえ、各種手当が手厚いです。

再任用よりも好待遇で働ける

引き続き、職員と同等の福利厚生が得られます。
(再任用職員では、扶養手当などの各種手当がありません)

働き方も、高齢者部分休業制度を使えば、職員の身分のまま勤務時間の半分を上限に休業することができます。

公務員の定年延長のデメリット

公務員定年延長のデメリットは、組織運営側の視点です。

また、現役世代に負担が増えます。

新規採用が減り、職員の年齢構成が歪み、相対的に職員の仕事量が増える

総務省資料:定年引上げに伴う消防本部の課題に関する研究会
https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/post-107.html

自治体の事務量が増えるわけではないので、根拠なく定員増はできません。

60代が増え、20代が減ることになります。年齢別職員構成に、ゆがみが生じます。

定員管理は現状のままになると、新採用を抑制することになるためです。

普通退職がなければ、2年に1回の採用になってしまう(もしくは2年間で平準採用)ため、その結果、令和15年度まで20代の職員が例年の半分になります。

定年延長後の職員は、現役並みに働く人がいるかもしれませんが、20代の働き方に代替えできるかといえば、難しいでしょう。また、高齢者部分休業制度を使って現役続行する場合は、勤務時間の半分を上限に休業できます。

相対的に、若手職員の負担が増えます。

昇任ポストが相対的に減り、昇進ペースが遅くなる。モチベーションダウン

定年延長後の職員は、いわゆる役職定年により、基本的に管理職から外れますが、係長クラスの監督職に就きます。係長クラスは一般職員クラスになるとはいえ、新規ポストを増やさない限りは、上が詰まります。

定年延長者全員分のポストを用意できるかといえば、難しいところがあるので、昇進ペースが遅くなるでしょう。職員の士気(モチベーション)が下がります。

継続雇用が不適格な者も、引き続き勤務する

継続雇用が不適格な者も、引き続き勤務することも負担増になります。

公務員の定年延長 対策例と注意点

定年延長によるデメリットについて、対策例と注意点を上げます。

定員管理、定数増に向けた取り組み

自治体としての事務量は変わらないため、定数増への理解がされるか?

しかしながら、定数増に向けた定員管理への取り組みが重要になってきます。

これをしないと、20代の採用が抑制されることになるためです。

では、どの程度増やすか?

予算との兼ね合いになりますが、人的資源の根拠数値も必要です。

60代の働き方が、(定年延長が無かった場合に採用する予定だった)20代と同等になるか?

改めて業務量を計測して、必要な人的資源を計算するなどの対策が必要になってきます。

具体的な方策は、まだ国からは出ていませんが、まずは、R15年度の職員年齢構成比を試算して、どの程度20代が不足するか検討することから始めることです。

安定した採用計画

採用は、退職者に対する補充です。

定年延長期間中は、2年に1回、定年退職者が出ない年があるため、安定した採用計画が立てられません。特に小規模自治体では大きな問題になってきます。

たとえば、2年で平準化して採用数を確保する、10年で平準化して採用数を確保するなど

柔軟な定員管理により、安定した採用計画が立てられるよう取り組みが必要になります。

監督職のポスト新設

管理職は、役職定年により監督職に、監督職は一般職になります。

そうなると、監督職が圧迫します。

60代に適した職場の監督職ポストの新設が必要になってきます。

公務員の定年延長のメリット、デメリット まとめ

公務員定年延長は、長期的な生活設計ができるようになります。

その反面、採用が抑制されたり、職員の負担増につながるなどのデメリットを含みます。変えるのは難しいところがあります。若年層にとっては、デメリットが目立つ制度に見えてしまいますね。

定員管理の在り方等は、総務省が検討会を進めていますが、具体的な解決案は出てきていないのが現状ですが、まずは各自治体でR15年度の年齢構成比をシミュレーションしてみるところから始めると、危機感が湧くでしょう。

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